姿勢制御

はじめに

 FITEの望遠鏡は従来の気球搭載望遠鏡とは次の2点で大きく異なります。 一つは、ゴンドラから10m離れたところに口径50cmの鏡を置くことから従来のゴンドラと比べて 数十倍大きな慣性モーメントを持つことです。
もう一つは、FITEが1秒角の空間分解能を目指すことから姿勢安定精度も1秒角以下が必要となるために、3軸姿勢制御を採用することです。  これまでFIRBEや他の殆どの気球望遠鏡では経緯台方式を採用してきました。 FIRBEの姿勢安定精度はフライト中でざっと数十秒から1分角程度で、この精度は主に気球の振り子運動による外乱によって決まっていました。 重心支持の3軸制御を採用すれば振り子運動による外力の影響を受けないため、FITEではこれを採用します。


姿勢制御とは

 ここで話す姿勢制御とは、気球で打ち上げる飛翔体(FITE)がとる姿勢をコントロールし、自分達が望むような方向を向かせたり、姿勢をとらせることです。 ある天体を観測するには、その天体に望遠鏡を向け続ける必要があります。 これが別の方向を向いたり姿勢が安定しなかったりすれば、精度よく観測することは出来ないため、姿勢制御を行わなければなりません。


制御方式

 これまで気球観測において、望遠鏡の姿勢制御には経緯台方式が採用されてきました。 これは方位角方向に対してはゴンドラ自体を回転させ、仰角方向はゴンドラ内で望遠鏡を動かすことによって制御する方法です。 この方法の利点は制御系を簡素化できる事ですが、ゴンドラ全体が振り子運動をし始めたとき、 その影響を打ち消すことがきわめて困難であるという欠点があります。 このためこの方式では姿勢安定精度が数十秒から数分をいったところが現実的な限界となっています。
 FITEでは1秒角の姿勢安定精度を達成するために、ゴンドラを重心で吊った上での3軸制御を制御方式として採用します。 この3軸姿勢制御とは、3つの軸をそれぞれ制御する方式であり、科学衛星などでもっぱら用いられていますが、 これまで気球では殆ど行われたことはありません。 ゴンドラを重心で吊った上での3軸姿勢制御方式では、 制御系がやや複雑になる上、重心で吊るために構造的に難しくなってしまいますが、 ゴンドラ全体が振り子運動してもその影響を受けないという利点があります。


制御の基本

 私達が行おうとしている姿勢制御は、簡単にいうと鏡を向けたい方向に向け続けられるようにゴンドラの姿勢を止めておくことです。 どのように制御するかというと、センサーから得られた位置情報と目標値を制御則に入力し、 そこで計算してアクチュエータを動かしゴンドラを動かす、さらに移動後の位置情報をセンサーで読み取り制御則に入力し再計算する、 というようにループさせています。これを閉ループ制御またはフィードバック制御といいます。

閉ループ制御の概念図
閉ループ制御の概念図

テストゴンドラ

 FITEは、ゴンドラが従来のものと比べ数十倍の慣性モーメントをもつことと、 姿勢安定精度の点から3軸姿勢制御を採用しているという2点において従来の気球搭載型望遠鏡と大きく異なっています。 ほぼ前例の無いこれら二つの事柄を実験的に検証するために、FITEのフライトモデルを模したテストゴンドラを作製し、 姿勢制御系を構築し、さらに予備的な姿勢制御試験を行っています。
 試験の結果、方位角制御では40秒間1秒角程度の安定精度を得ることが出来ましたが、 数分の間で見ると数十秒角程度の安定精度となっていました。これはよじれ戻し機構の制御法を改良することによって改善することが期待されます。 また、制御中に0.5秒角程度の細かな振動がみられました。
 またX、Y軸2軸制御では、X軸で50秒角程度、Y軸で10秒角程度の安定精度となっていました。 これは錘移動ステージの制御をより効果的に行うことによって、更なる改善が期待できます。
 これらの試験の結果から設計概念が妥当であることが確認されました。

テストゴンドラ
テストゴンドラ

今後の課題

 姿勢制御系のこれからの課題としては、現在テストゴンドラは3軸のうちの一つもしくは二つでしか試験を行っていないため、 3軸同時に制御試験を行う必要があります。 また、実際にFITEのフライトで用いるゴンドラを使っての試験も必要です。 外乱に対する応答や大角度を動かすときの制御プログラムの開発等も必要です。 さらに、ジャイロの位置データの精度を向上させる方法も調べなければなりません。


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