★赤外線観測とは?★

★赤外線天文学

 赤外線天文学とは1〜300μmの電磁波スペクトル域の天文学のことである。
このような研究が可能になったのは、半導体検出器などの技術発展によるところが大きく、 実験室における基礎開発を経て、汎用、専用の望遠鏡に直接応用できる技術が確立したためである。
 その結果として、例えばすばる望遠鏡があげられる。 すばる望遠鏡は水蒸気層を越えて標高4,200mのハワイ、Mauna Kea山上に大型赤外望遠鏡として 現在がんがん活躍中であり、世界的にも有名である。
 一方、水蒸気層のはるか上をいき、宇宙から赤外線を観測をするいわゆる 赤外線宇宙望遠鏡も成功しており、世界初の人工衛星を用いた初めての赤外線観測は1982年に IRAS(赤外線天文衛星)によって行われた。この衛星はアメリカ、オランダ、イギリスの三国共同 で開発されたもので、約10ヶ月間観測を続け、液体ヘリウムの消化とともにその使命を終えた。
 IRASにより観測された天体は20〜30万個におよび、銀河面や赤外銀河の表面輝度の分布図、 点源のカタログづくり、全天のサーベイ観測などが行われた。 観測結果は多岐にわたり、その量も莫大であるが、数多くの新天体も報告されている。
今日、日本では平成18年2月に打ち上げたあかり衛星が今まさに 宇宙空間でせっせと赤外線を観測中である。あかり衛星は約1年半の観測期間が 期待されており、わが国の赤外線天文学をリードしてくれるであろう。
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↑↑あかり衛星の観測イメージ図


★大気による吸収

 また、今まで赤外線による宇宙の観測が難しかった理由として、 地球大気による赤外線の吸収が挙げられる。
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↑↑地球大気による電磁波の吸収スペクトル
 上の図は、地球大気の吸収スペクトルである。図から読み取れるように 赤外域(Infrared)では主に水分子(H20)からの吸収が大きい。 したがって、地表で観測される宇宙からの赤外線はそのものの 情報が地表にとどくのではなく、 水分子に大部分を食べられた情報が届いてしまうのである。
 そこで、この吸収問題を回避するために、例えば先に紹介した すばる望遠鏡では水蒸気層よりも高い山の上に望遠鏡を建設することで 問題を軽減している。
また、あかり衛星などの宇宙望遠鏡は水蒸気層を完全に通り越しているので 大気により赤外線を食べられてしまうことは考慮しなくてよいことになる。 すばらしい★


★赤外線天文学の歴史

 ここで、より赤外線天文学について理解してもらうために 赤外線天文学の歴史を紹介する。赤外線の発見は今からおよそ200年前、日本では伊能忠敬がちょうど 蝦夷地を測量していた江戸時代末期1800年であった。
 そんな時代のイギリス。F.W.Herschelは彼自身がつくった世界最初のプリズム赤外分光器 で太陽光スペクトルを測定中に、可視スペクトルの赤の部分からさらに外側に 検知される不可視光として赤外線を発見したのである。 もちろんこれが赤外線による天体観測の始まりでもある。
 しかしここでHerschelが使った機材は赤外線検知器としては感度が低く、 太陽以外の天体観測に応用することは不可能であった。
herschel←F.W.Herschel

その後、試験的に月や明るい惑星、恒星の観測が試みられたが、 本格的な赤外線天文学は技術の進歩を待たねばならなかった。
 そして時は流れ、1960年代。第二次世界大戦以降、半導体工学の発達によりPbsを はじめとする光伝導検知器や液体ヘリウムで冷却されたゲルマニウムボロメーター などの高感度赤外線検出器が開発され、微弱な天体赤外線の観測が可能になった。
 以降40年間、赤外線天文学は爆発的な進化を遂げ、 今や天文学にはなくてはならない一分野として日々研究が行われている。


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