FITE干渉光学系調整機構

FITE干渉光学系の役割は、干渉縞を捉えるために、
天体からの光を高い要求精度内で検出器に届けることです。
ここでは、どのようにしてFITE干渉光学系を調整するのか、
光学調整手法について記載します。

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FITE干渉光学系調整機構

私たちは、2枚の軸外し放物面鏡を、シャックハルトマン波面センサーを用いて、理想状態からのズレ量を測り、調整を行います。シャックハルトマン波面センサーは、センサーの前にマイクロレンズアレイが取り付けてあるカメラです。これにより、マイクロレンズアレイに入射してきた光を、マイクロレンズの数だけ分割し、センサー上に結像します。シャックハルトマン波面センサーによる波面測定原理を、下のイラストで簡単に説明します。

シャックハルトマン波面センサーによる測定原理   
シャックハルトマン波面センサーによる波面測定原理。図の右から光が進行し、左のシャックハルトマン波面センサーに結像します。図の左から、シャックハルトマン波面センサー、干渉系調整機構光学系、FITE放物面鏡を簡易的に表しています。被験面である放物面鏡のズレ量を測るため、事前に参照光線を波面センサーに入射させ、波面センサーでスポットを撮像しておきます。その後、被験光線を入射させると、参照光線と光路が一致していなければ、センサー上で異なる位置に光が結像します。この時のセンサー上の結像位置ズレ量をηとすると、この波面ズレを発生させた原因となる放物面鏡のズレ量Δを知ることができます。

従来までは、軸外し放物面鏡の調整を、1枚ごとに行っていました。しかし、一枚ごとの調整は、干渉系であるがゆえに何度も2枚の放物面鏡の位置調整を行う必要があり、非常に時間がかかりました。波面センサーを用いた新しい調整手法では、従来までの鏡1枚ごとの調整だけでなく、2枚同時に撮像・解析を行うことができます。これにより、光学調整がより効率良く行えることが期待できます。新しく設計製作を行った干渉光学系調整機構は、下に載せている写真のような外観をしています。

FITE望遠鏡構体の全体写真 左の写真は、干渉光学系調整時のFITE望遠鏡構体全体写真です。光学調整時に外部からの光が入らないように、暗幕がかけられています。構体の上部には2枚の軸外し放物面鏡(構体内部右上に見られる金色の鏡)が取り付けられています。構体下の中央に設置されているのが、新しく開発した干渉光学系調整機構です。干渉光学系調整機構を挟むようにして両端に置かれているのは、一次平面鏡設置台です。FITEフライト時には6mのアームの両端に取り付けられている一次平面鏡ですが、調整時には、写真のように設置台の上に置かれ、調整に使用します。

新干渉系調整機構外観 右の写真は、新しく設計制作をした干渉光学系調整機構です。写真右手に見える黒い箱が、シャックハルトマン波面センサーです。 シャックハルトマン波面センサーの測定原理から、高精度な参照面が必要になるため、参照面として、直径300mmの参照球面鏡が 取り付けれています。写真の上部に見られる黒い鏡ホルダーに参照球面鏡が入っており、3つの大きな送りネジによって位置の調整を 行うことができます。

新しく開発した調整機構は、FITE望遠鏡構体に写真のように取り付けられ、FITEフライト前に行う地上での干渉光学系の最終調整に使われます。この調整機構に組み込まれているレーザー光源で、調整対象である放物面鏡にレーザー光を出射し、放物面鏡と平面鏡から反射してきた光をシャックハルトマン波面センサーで撮像した後、専用のプログラムで解析を行います。

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光学収差解析

ここでは、シャックハルトマン波面センサーで撮像した画像データから、放物面鏡の状態を知るために行う、光学収差解析について記述します。シャックハルトマン波面センサーで撮像した画像は、下の写真のように、放物面鏡から反射してきた光を、マイクロレンズアレイでいくつにも分割し、集光した画像となっています。下の写真は、波面センサーの写真を4枚並べたものです。それぞれ、FITE放物面鏡の状態が違っています。そのため、放物面鏡の状態によってマイクロレンズアレイに入射する波面の状態が変化するので、画像によってスポットの輝度が異なる様子がわかるかと思います。

マルチスポット画像

このシャックハルトマン波面センサーで撮像した画像を、FITE干渉光学系用に作成したプログラムで解析し、放物面鏡が理想状態からどのようにずれているのか求めます。鏡面状態を知るため、面形状をツェルニケ(Zernike)多項式に展開し、その微分値と測定値を比較します。 干渉光学系調整機構を用いた収差解析の結果から、別にある放物面鏡調整機構(私たちはこれを、λ-pod[ラムダポッド]と呼んでいます)を動かして、放物面鏡の位置調整を行います。λ-podの説明は、このページでは割愛させていただきます。ここまでの流れで、放物面鏡が位置要求精度内に収まり、天体からの光を検出器へ届ける準備が完成します。下のイラストで光学収差解析の流れを簡単に紹介します。光学収差解析では、大きく4つのステップを踏んでいます。このイラストは、焦点外れ収差を人工的に作成し、実際にプログラムで解析した結果の一つを表しています。

解析の流れ

現時点では、放物面鏡の各ビームの精度測定試験を既に終え、1ビームでは充分な光学精度内に収まっていることがわかっています。 あとは、放物面鏡を2枚同時に測定を行うことで、干渉に必要な要求精度内に調整を行うのみとなりました。

フライトに向けてこれからも粛々と準備を進めてまいりますよ!

2017年2月 担当 佐々木彩奈

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